2026 年10月 16日
“できる仕事”から、“得意を生かす役割”へ。浜松平和学園で広がった障がい者雇用
法人プロフィール
法人名:学校法人浜松平和学園
業種:学校教育(平和こども園/旭ヶ丘幼稚園)
従業員数:約150名(2026年4月時点)

【ご協力】
園長 矢野様/副事務長 米田様
【聞き手】
株式会社クラ・ゼミ 障がい者雇用サポート事業部 河合(支援担当:菅沼)
パソコン業務から始まった一人の職員の仕事は、木工、生き物の世話、交通整理、保育補助へと少しずつ広がりました。その変化は、本人の働きがいだけでなく、周囲の職員の見方にも影響を与えています。学校法人平和学園の矢野園長と米田副事務長に、最初の不安、仕事を調整した過程、そして一年後の職場の変化を伺いました。
法定雇用への対応と、午後の人手不足。二つの課題が重なった
浜松平和学園が運営する平和こども園と旭ヶ丘幼稚園では、合わせておよそ150人の職員が働いています。認定こども園への移行や低年齢児の受け入れ増加に伴って保育士が増え、障害者雇用を具体的に考える時期を迎えていました。
同時に、現場には別の課題もありました。子育て中のパート職員が帰る午後2時以降は人手が薄くなりやすく、保育士はブログや写真整理などのパソコン業務も担っていました。これらの仕事を別の職員が担えば、保育士が子どもと関わる時間を増やせます。障害者雇用は、法令への対応だけではなく、園の実際の困りごとを解決する選択肢でもありました。
一方、現場には『どこまで仕事を任せてよいのだろう』という不安がありました。矢野園長は、支援が必要な園児を含め、さまざまな人が一緒に過ごす園の考え方を職員に少しずつ伝え、理解を得ていきました。

最初から仕事を広げず、パソコン業務から始めた
クラ・ゼミの支援を通して入職したAさんは、まず職員室でブログ作成や写真整理を担当しました。いきなり保育の現場に入るのではなく、園が切り出したパソコン業務を入口にしたのです。
しかし、勤務時間内にパソコン業務だけでは仕事量が足りない日もありました。そこで園は、Aさんに『こんなことはできますか』と一つずつ尋ねました。Aさん自身も、木工や植物、生き物の世話が得意だと伝えました。こうして、仕事は園芸や金魚の水換えなどへ広がっていきました。

合わない仕事は調整し、得意な仕事へつなぎ直す
すべてが最初からうまく合ったわけではありません。業務の種類や量を微調整しながら、Aさんも自分が力を発揮できる仕事に向かいました。本人が自ら調査し、金魚の水が汚れにくくなるようタニシを入れることを提案するなど、主体的に仕事に取り組んでいます。
木製の冷蔵庫が、得意を職場全体に伝えた
Aさんの経験が特に活きたのが木工でした。園では、一つのクラスだけ木製のままごと用冷蔵庫が不足していました。市販品は高価です。園が『同じものを作れますか』と尋ねると、木工が得意なAさんは見事に作り上げました。完成した冷蔵庫は、すでに子どもたちの遊びに使われています。
矢野園長は職員会議で、『あれはAさんが作ってくれたんですよ』と紹介しました。本人の貢献を周囲に見える形で伝えることが、職員からの信頼や新しい依頼につながります。米田副事務長も、得意なことを任せるのは園のためだけでなく、本人のやりがいにもなると感じています。Aさんに尋ねると、『楽しいです』と答えたそうです。

注意すべきことは曖昧にせず、改善を一緒に確認する
障害者雇用に限りませんが、雇用では合理的配慮が必要です。一方で働く中では守るべきルールが存在します。子どもたちが生活する場では、特に、安全に関する基準を曖昧にはできません。この基準については、園長も都度誠実に本人に伝え、本人も納得する。この関係が、任せられる仕事を増やす土台になっています。
職員室の中から、子どもや保護者と関わる職員へ
今では、Aさんは午後の送迎時間帯の交通整理にも加わり、保護者にも園の職員として紹介されています。人手が必要な時には保育補助に入り、夏には複数の職員と一緒にプール監視を担当する予定です。子どもたちも『Aさん!Aさん!』と声をかけるようになりました。
最初はほぼ職員室の中で働いていたAさんが、今では子ども、保護者、職員と関わる役割を担っています。本人から勤務時間を増やしたいという希望がでたことを矢野園長にとって大変うれしいことでした。
役割の広がりが、働き続けたいという意欲につながっていることがうかがえます。

一人目の経験が、『特別ではない』という土壌をつくった
採用前、職員の中には『本当に大丈夫だろうか』『どこまでできるのだろう』という戸惑いがありました。しかし、一年間、Aさんが真面目に働き、さまざまな形で園に貢献する姿を見て、その感覚は変わりました。
米田副事務長は、障害のある方を雇うことが『普通なんだ、ありなんだ』という感覚が職員の中に生まれたと話します。浜松平和学園では、2026年8月から、さらに一人、障害のある方を保育補助として受け入れる予定です。一人目の雇用経験が、二人目を自然に迎える土壌をつくりました。

矢野園長が大切にしているのは、障害や国籍などの違いによって区別するのではなく、園児も職員も同じ仲間として協力することです。障害者雇用を特別な取り組みとして掲げるのではなく、日々の仕事の中で少しずつ理解を広げる。その姿勢が、浜松平和学園らしい雇用を形づくっています。
障害者雇用は、完成した仕事を用意してから始めなくてもよい
浜松平和学園の事例が示しているのは、最初から本人に合う仕事をすべて用意する必要はないということです。まずできる仕事から始め、本人の得意や意欲を知り、合わない部分は調整しながら役割を広げていく。その過程で、本人の活躍と職場の理解が同時に育っていきます。
『何を任せればよいかわからない』『現場が受け入れられるか不安だ』という段階でも、雇用に向けた準備は始められます。クラ・ゼミ障がい者雇用サポート事業部では、企業・法人の状況を伺い、仕事の整理や人材とのマッチングなど、最初の一歩を一緒に考えています。

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