2026 年10月 16日
“製造業では難しい”から、“専門性を生かす雇用”へ。
浜名ワークスが見いだしたCAD人材の可能性
法人プロフィール
法人名:株式会社浜名ワークス
業種:輸送用機械器具製造業
従業員数:約300名(取材時点)

【ご協力】 人事課 課長 花島様
【聞き手】 株式会社クラ・ゼミ障がい者雇用サポート事業部 河合(支援担当 菅沼)
一品ごとに仕様が異なり、図面を読みながら手作業で作る浜名ワークス。定型的な仕事が少ないことから、同社では障害者雇用を広げることは難しいと考えていました。しかし、ハローワークのイベントをきっかけに学びや地域との接点を増やし、2026年4月、専門経験を持つAさんをCADオペレーターとして採用しました。これまでの現場補助とは異なる技術系職種での雇用に、どのような可能性を見いだしたのでしょうか。花島様に伺いました。
法定雇用への対応を、学び直す機会に変えた
浜名ワークスが障害者雇用を改めて進めようとした背景には、退職などによって雇用人数が減り、法定雇用率への対応が急務になったことがありました。花島様は、まず不足を改善することを目標に、2025年春頃から採用活動を本格化させました。
一方、同社が手がける製品は、同じものを繰り返し作る量産品ではありません。多くが個別仕様で、製造現場では図面や仕様書を読み、不明点を確認しながら仕事を進めます。花島様は、障害者雇用に向く定型業務がほとんどないとして、「正直、難しいと思っていました」と振り返ります。
そこで活用したものの一つが、障害者雇用相談援助事業でした。知識が十分ではないと感じていた花島様は、セミナーや見学会、ハローワークのマッチングの場などに参加。さまざまな支援機関と接点を持ち、疑問を一つずつ確認していきました。

「CAD経験者はいないだろう」という思い込みを越えた出会い

それまで同社で働く障害のある社員は、製造現場の作業補助や塗装前工程などを担っていました。技術系職種で採用した経験はありませんでした。
転機になったのは、クラ・ゼミの支援担当から、CADの実務経験を持つAさんの提案を受けたことです。Aさんは大手企業の設計部門で働いた経験があり、自分のキャリアを生かせる職場を探していました。浜名ワークス側にもCAD人材への需要がありましたが、花島様は当初、障害者雇用の人材市場にそのような経験者はいないだろうと考えていたといいます。
「可能性はゼロではない。」そう考えて面談を進めた結果、Aさんは2026年4月に入社しました。取材時点まで、勤怠は安定しています。これまでのところ、担当業務の遂行にも問題はないと評価されています。
2D図面の3D化から始め、設計者が本来業務に集中できる環境へ
Aさんが担当しているのは、過去に作成された2D図面を3Dデータへ置き換える仕事です。浜名ワークスでは、顧客の仕様に近い過去の図面を基に、一品ごとに必要な変更を加えて設計します。以前は、2D図面を3D化する工程も正社員の設計者が担っていました。
現在は、この工程を専門的な業務として切り出し、Aさんらが担当しています。単なる補助業務でも、設計者と全く同じ業務でもありません。専門知識を生かしながら、正社員の設計者が顧客対応や新たな設計などの本来業務に集中しやすくする役割です。
将来的には、社内の環境や製品への理解が深まり、顧客仕様、営業からの要望、製造現場の条件などを把握できるようになれば、担当範囲をさらに広げられる可能性があります。まずは2Dから3Dへの置き換えを、無理なく経験を積む最初のステップにしています。
仕事は安定。次の課題は、周囲との相互理解
入社前、花島様が最も心配していたのはコミュニケーションでした。CAD作業は一人で集中できますが、設計業務では打ち合わせや不明点の確認が欠かせません。
職場では周囲の社員が丁寧に接しています。一方で、入社からまだ約3か月ということもあり、お互いに慎重で、雑談ができるほどの関係には至っていません。花島様は、担当業務そのものには問題がないとしたうえで、今後、趣味の話などもできるようになり、相互理解が深まることを期待しています。
これは、配慮が不足しているということでも、本人だけの課題ということでもありません。受け入れる側も距離感を探し、本人も新しい環境に慣れていく途中です。現在の6時間勤務を続けながら、半年程度を一つの区切りとして、今後の働き方を考えていく予定です。

相談援助事業がつくったのは、「答え」よりも相談できるつながり
花島様は一人で人事業務を担い、障害者雇用についても自ら情報を集め、上司や各部署に提案してきました。ハローワークや相談援助事業を利用して特に大きかったのは、セミナー、見学会、ハローワーク、支援機関などとの接点が増えたことでした。
セミナーで聞いたことをそのまま受け入れるのではなく、別の機会に「この理解でよいですか」「この場合はどう考えますか」と確かめる。そうしたやり取りを重ねる中で、障害者雇用に関する知識と判断の軸が育っていきました。
そして、つながりを持ち続けた先に、Aさんとの出会いがありました。当初の採用目標だけを見れば活動を終える選択肢もありましたが、将来の退職や法定雇用率の変化にも備え、花島様は活動を継続しました。「縁と運は、持っていなければいけない。」その言葉が、継続した取り組みの意味を表しています。
画一的に扱わず、一人ずつ「どこまで」を確かめる
花島様が現在大切にしているのは、障害のある社員を一括りにしないことです。得意なこと、必要な配慮、指導の受け止め方は一人ずつ異なります。その人にはどこまで任せられるか、どのような伝え方がよいかを確認しながら関わる必要があると考えています。
正式な面談だけに頼らず、1日に1~2回現場を回り、普段の様子を見て声をかけます。一人でいる時や体調が気になる時には、立ち話で「最近どうだ」と尋ねます。一品生産で、時間に追われるライン作業ではない同社の特徴も、こうした日常的な声かけをしやすくしています。
合理的配慮を特別な設備や制度だけで考えるのではなく、本人の状態を日常の中で知り、必要な時に話せる関係をつくる。それが浜名ワークスで始まっている定着支援です。

「仕事がない」ではなく、得意と業務の接点を探す
Aさんの採用を通じ、花島様の見方は変わりました。定型業務が少ないから障害者雇用は難しい、と決めつけるのではなく、その人の得意なことや性格を確認すれば、働ける場所が見つかる可能性があると感じています。
今後はCADのような専門業務だけでなく、緑地の手入れや社内清掃など、正社員が本来業務に集中するための仕事の切り出しも検討しています。1人で全てを担う形に限定せず、短時間勤務の人が複数で役割を担うことも選択肢です。
障害者雇用は、既存の求人に合う人だけを探す取り組みではありません。社内の仕事を見直し、本人の経験や得意と結びつけることで、これまで想定していなかった役割が生まれます。浜名ワークスの取り組みは、その可能性を示す第一歩です。
一歩目は、「自社には無理」と決める前に相談すること
浜名ワークスも、最初から答えを持っていたわけではありません。法定雇用への対応をきっかけに学び始め、支援機関との接点を増やし、専門経験を持つAさんと出会いました。入社後も、仕事は安定している一方、職場での関係づくりはこれからです。完成された成功事例ではなく、試し、確認しながら進めている事例だからこそ、他の企業にも再現できる点があります。
「自社には任せられる仕事がない」「どのような人を採用できるのかわからない」という段階でも、準備は始められます。クラ・ゼミ障がい者雇用サポート事業部では、企業の状況を伺い、制度の理解、地域の支援機関との接続、仕事の整理、人材とのマッチングまで、最初の一歩を一緒に考えています。

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