2026 年7月 17日
「一言で言うと、自信がつきました」
学校法人興誠学園が進める、障がい者雇用と“強みを活かす”職場づくり
法人プロフィール
法人名:学校法人興誠学園
業種:教育・学習支援業
従業員数:301名(2026年5月時点)

【ご協力】
事務局長 中津川様/事務長 荻原様
【聞き手】
株式会社クラ・ゼミ
障がい者雇用サポート事業部 河合(支援担当:菅沼)
支援・雇用の概要
学校法人興誠学園様では、法定雇用率の観点から障がい者雇用の拡大が課題となっていました。
クラ・ゼミは2025年11月27日より支援を開始。現在は、精神障がいのあるAさんが法人本部で事務職、
Bさんが短期大学部で広報業務を担当し、それぞれの強みを活かして勤務されています。
「必要だとは分かっていた。でも、どう受け入れればいいのか分からなかった」
―クラ・ゼミが関わらせていただく前、御校での障がい者雇用はどのような状況だったのでしょうか。
中津川様:
大学には、すでに用務員として障がいのある方が1名勤務していましたが、法定雇用率の面では、さらに採用を進める必要がありました。
ただ、必要性は分かっていたものの、実際にはなかなか前に進められず、その理由の一つは、受け入れる私たちの側にも不安があったからです。
特に精神の方を雇用した時に、職場としてどう対応すればよいのか、また、入職後に困りごとが出た時に誰に相談すればよいのか、そこが不安でした。
そんな時に、支援機関が伴走してくれるという話を伺い、「それならやってみよう」と思いました。

支援体制があることが、最初の一歩を後押しした
―支援機関がついていることは大きかったですか。
中津川様:
大きかったです。
そこがあるかないかで、安心感は全然違いました。入職後の最初の時期は、本人も職場もまだ慣れていません。
その時に、直接本人に言いづらいことや、
職場側だけでは判断しづらいことを相談できる相手がいるのは、とても安心でした。

荻原様:
障がいのある方が入職する前に、ジョブコーチが職員向けに研修をしてくれたり、
業務管理のひな形を作ってくれたりしました。
プロの方が入ってくれたことで、準備が非常に進めやすくなりました。
「最初は何ができるのか分からなかった」Aさんの強みが見えた瞬間
最初に法人本部で受け入れたのがAさんでした。
―Aさんは、どのような業務を担当されているのでしょうか。
中津川様:
最初は、何ができるのかよく分からず不安でした。
ただ、文章を読み込んだり、規程を整えたりすることに強いことが分かりました。
今は、文章の修正や規程の確認などをお願いしています。
最近では、すでにあるマニュアルのようなものを集めて、学園向けに一つのしっかりしたマニュアルにしてもらったり、いじめ対応のマニュアルをゼロから作ってもらったりしています。
荻原様:
私が作った規程の添削や、ダブルチェックもしてもらっています。
誤植のチェックだけでなく、「この言い回しだと分かりづらいから表現を変えたほうがよい。」といった意見も出してくれています。
かなり鋭いチェックをしてくれます。
―最初から、その力が分かっていたわけではなかったのですね。
中津川様:
そうです。最初は、パソコンで作成された文字の「変換ミス」などの文字修正だけをお願いしていました。
そうしたら、「ここの言い回しが分かりづらい」といった指摘をしてくれるようになりました。
それが積み重なって、「ここまでできるなら、自分で作ってもらおうか」となり、やっていくうちにどんどん出来が良くなっていった。
最初は文字修正から始まりましたが、少しずつ文章全体の構成や表現にも意見を出してくれるようになりました。今では、学園の規程やマニュアルづくりを支える存在になっています。
中津川様:
また、Aさんは「物事に優先順位をつけることが苦手」と事前に聞いていました。
そのため、毎日「今日は何を、どの順番で進めるか」をTeamsで伝えるようにしています。
荻原様:
順番さえ示しておけば、その通りに進めてくれます。
最初は仕事を探すこと自体が大変でしたが、今はルーチン業務も固定化してきて、だいぶ進めやすくなっています。
業務切り出しは、全部門への聞き取りから始まった
―法人内の業務は、どのように切り出していったのでしょうか。
荻原様:
法人本部で受け入れる前に、全部門へ「今困っている業務はないか」と聞きました。
集まった業務をExcelでリスト化し、その中から優先順位をつけて任せていきました。
最初は仕事を探すことに苦労しました。
ただ、その過程で文章添削や規程作成の業務が生まれました。
今では、その業務をAさんが担ってくれて、とても助かっています。 完全に戦力として一緒に働いています。

Bさんは、短期大学部の広報業務へ
続いて採用されたBさんは、デザインスキルを活かし、短期大学部で広報業務を担当しています。
―Bさんは、最初から短期大学部に配属されたのですね。
中津川様:
はい。当初は、法人本部で受け入れてから各部門に移っていただく方針でした。
ただ、Bさんの場合は、持っているスキルが短期大学部や大学の広報業務に向いていると感じました。
短期大学部の管理職にも見てもらい、「これなら最初から短期大学部でも大丈夫だろう」と判断しました。 実習も、最初から短期大学部で行いました。

「障がい者雇用だから基準を下げた」のではない
―Bさんは、どのような業務を担当されているのですか。

中津川様:
印刷物のデザイン、チラシ、缶バッジ、クリアファイルなど、広報に関わる業務を担当していただいています。
体験の時に作っていただいたものが大変良かったので、そのままクリアファイルのデザインとして使わせていただきました。
―障がい者雇用だから、デザインの基準を下げたわけではないのですね。
中津川様:
全然そんなことはありません。
作っていただいたものが良かったので、「これならそのまま使えるだろう」ということで使わせていただきました。
荻原様:
コンソーシアムの公開講座のチラシなども作っていただいています。
中津川様: 短期大学部だけでなく、
大学や他部門の広報物も担当していただいています。
現場の不安は、実際に接することで変わっていった
―受け入れる現場の皆さんの気持ちに変化はありましたか。
中津川様:
最初はみんな心配していました。
ご本人は、それ以上に不安だったかもしれません。
ただ、実際に始まってみると、思いのほかうまくいきました。
Aさんは高校の事務局職員とも上手にコミュニケーションを取っています。
そうした良い例があったので、Bさんが来た時も、短期大学部の方々もうまく受け入れてくれたように思います。
―受け入れる側にあった思い込みや不安が、実際に接する中で少しずつ解消されていったということでしょうか。
中津川様: そういうことだと思います。
「一言で言うと、自信がつきました」
―ここまで振り返って、始める前と始めた後で、気持ちや職場に変化はありますか。
中津川様:
一言で言うと、自信がつきました。
こちらの受け入れる側も自信がつきましたし、周りの人も偏見を持たずに受け入れられる下地ができたと思います。
荻原様:
ダイバーシティという観点でも、興誠学園の場合は大学では特別支援学校の教員養成を行っています。
そういう意味でも、こういう形で障がいのある方を受け入れることは、社会的意義として必要なことだと思います。
今回それが実践できているので、今後さらに拡充できたら良いと思っています。
―学園の理念や教育プログラムと、実態が一致し始めているということですね。
一歩踏み出せていない法人へ
―まだ一歩を踏み出せていない他の法人様も多いと思います。そういった方たちにメッセージを出すとしたら、どのような言葉になりますか。

中津川様:
私は最初、支援機関がきちんとフォローしてくれるかどうかを非常に重視していました。
そのフォローがしっかりしているところからの紹介であれば、まず一歩やってみることだと思います。
やってみれば、受け入れる側にも自信がつきますし、周りも経験を積めば採用が進むのではないかと思います。
荻原様:
いきなり直接採用に進むよりも、間にクラ・ゼミさんのような支援機関を挟んで進める方が、より進みやすいのではないかと思います。
編集後記
学校法人における障がい者雇用では、「どのような業務を任せるのか」「現場がどう受け入れるのか」という点で悩まれる法人も少なくありません。
興誠学園様の取り組みは、最初から完璧な形があったわけではありませんでした。
小さく任せ、強みを見つけ、学園内の仕事につなげていく。その積み重ねが、Aさん・Bさんの活躍につながっています。
障がい者雇用は、単なる法令対応にとどまりません。
受け入れる側の自信を育て、組織全体の理解を少しずつ変えていく取り組みでもあります。
「まず一歩やってみる」
興誠学園様の事例は、その一歩の大切さを示す取り組みです。

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